【 奥大日岳 2611m 】
大日三山は称名川を挟んで室堂平・天狗平・弥陀ヶ原の北に連なる山並みです。
奥大日岳山頂は東大谷から聳える剱岳を望む絶好の展望台。
朝4時半、南向きの窓の外には目の前にオリオン座、外に出てみると剱御前の空には北極星を挟んで北斗七星とカシオペア座が向かい合っていました。でも風が強くてじっくり眺めていられません。早々に退散してまた暖かい布団の中へ。
御来光は別山の上でということですが、小屋の前から眺めるこんな光景で充分嬉しい。五竜岳から唐松岳を経て白馬連峰の山々の空が明るくなりました。
05:50 とりあえずたくさん着込んで歩き出します。室堂平の上には薬師岳、一ノ越の向こうの小さなとんがりは槍ヶ岳。
白い筋は雪と岩屑と火山ガスの煙、いかにも立山らしい光景です。
行く手の奥大日岳の山腹の筋はカガミ谷に残る雪渓らしい。
あっ、薬師岳に日が射した。カールにはもう雪は残っていない。その左は7月末に訪ねた黒部五郎岳。8月終わりに船窪小屋から見た薬師岳と併せて今年の高い山歩きの〆にふさわしい眺めです。
奥大日にも朝日が当たり始めます。昨日の夕日はこの海に沈んでいったんですね。
見える景色は刻々と姿を変えて、爽やかな朝がきた、「さぁ行くよ~」と手を上げて片手で撮ったから水平線は斜めになりました。
雷鳥沢の白い筋は水の流れ。
今日のコースは右に剱岳、左に薬師岳を従えて歩けるんですよ ♪。
何だか「武器輸出と医薬品援助」のセットみたい、って我ながらわけのわからない感想を抱きつつ。あれが「かの早月尾根」、その奥は毛勝山、と名前だけはお馴染みですが。
振り返ってみると、なんと気持ちいいこと。スカイライン上の剱御前小舎から歩いてきたトレイルがず~っと見渡せるんです。
前方左には天狗平から弥陀ヶ原に広がる台地。おもちゃみたいな高原バスが走っています。その裾を縫って称名川が、
って下を見たら、ビックリ。こんな大きなクラックが出来ていました。それにしても毎回雪渓を目にするたびに不思議なんですが、どうしてこうスッパリと?
明るい黄色から濃いオレンジ色のグラデーションに輝くミネカエデ。
奥大日の山頂が近づくと、中大日岳から大日岳も姿を見せ、その鞍部に赤い屋根の大日小屋が建っていました。トレイルは続く。今日はあそこまで。
09:00 奥大日岳三角点設置地点。2605.9m。最高となる2611m地点は登山道を少し離れた場所になります。
若者がザックを背負ったままいつまでも剱岳に見入っていました。前日その頂を踏んだことを思い返しているのでしょうか。あれが一服剱、盛り上がった瘤が前剱…
その気持ち、よ~くわかります。私も大分前だけれど、剱岳の帰りにこのルートを取って同じように眺めてみるはずだったので( 登頂後、台風接近で雷鳥沢へ下山 )。この凛々しい姿( 左右の早月尾根と別山尾根、少し傾いた(^^ゞ)を目にしたら、また行きたくなりました。混雑はともかくいくらか歩きやすくなったらしいし。
見えるのはもちろん剱だけではなく、360度ぐるりです。霞んではいても槍穂だって。
立山の峰々は手が届きそう。雄山と大汝山の稜線下にぽつんと雪が残っているのは天然記念物になっている「山崎圏谷」。明治38年に日本で最初に発見された氷河の地形だそうです。この夏はカールにいろいろと御縁が、って気にしているからですね。
私たちももっとここで過ごしていたいけれど、今日はまだ先があるのでそろそろ出発しなくちゃ。うん、年を取ったら雷鳥沢か室堂のお風呂付の宿に泊まってここを往復するのがいいな。夏は花が咲き乱れていて、ザラザラで埃っぽい立山三山より楽しいでしょう。
名残惜しくて、剱御前からの稜線をもう一度。
早月尾根の後ろの白馬の峰々に、左の端っこの朝日岳まで歩いた一昨年の縦走を思い出しました。朝日小屋で出された富山名物の昆布〆めがおいしかった、帰りに富山駅で買えるといいなぁなんて。
その先は暫く鎖や梯子の下りでしたが、そのうちにまた歩きやすい道になりました。
道端を彩っている紅葉(イワオトギリ・ミヤマダイコンソウ・ハテナ)。ハクサンフウロなんか名残の花とコラボで迎えてくれます。
突如現れた天空の城
こんな高いところの小さな水溜りにも生き物はいるんですね。アメンボ(?)の影が蝶々みたいで面白い。
少し前からガスが上がってきて、越えてきた奥大日岳も後ろの立山も見えなくなってしまいました。人工の庭園みたいな岩ゴロゴロの七福園でしばらく待ってみたけれど、青空はここまでが精一杯。
中大日岳の山頂は本当にここなんでしょうか。道の脇で見かけただけなんですが。それにしても、2500mとはきりのいい高さ。
12:00 大日小屋到着。昨日までの混雑と変わって今日は閑散というか静かというか、小屋番さんもなんだか勝手が違うようです。
霧はますます濃くなり、背後の大日岳もすっかり隠れてしまいました。小屋の正面に見えるはずの剱岳も見えません。今日称名から日帰りできたという地元の人が小一時間粘っているそうですが、諦めて下山していきました。
一休みして小屋から20分ほどの大日岳を往復。大日岳は中大日岳よりちょっぴり高くて2501mでした。何にも見えない、時間はたっぷり、palletさんから先週のラグビー戦の説明なんかしてもらいました。ラガーマンのご主人と一緒に試合を見ていたから詳しいんです。でも私は試合の流れどころかラグビーそのものがわかってない。えっ、前方にパスしてはいけないの??
夕食は5時から。今日の宿泊客は15人くらいで揃って食事が済みました。
食後はランプの灯りの元でコーヒーを。BGに低くギターの曲が流れ、その後の小屋番さんの生演奏も今日の小屋にふさわしい静かなメロディーで、幸せなひととき。
明日の朝はまた剱岳にお目にかかれるかな。
続く